歌詠みの綴り

短歌または詩。その説明

2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

歩く

思い切って あなたの腕に つかまってみた そっと尋ねるように。 笑顔のままだった 歩く時 あなたの腕に つかまるのは どうやらなにも問題がないらしい。 手をつなぐときはいつも突然で、心臓の早さがアレグロになる。 歩きながら指を絡めて 離さない、という…

美術館

あなたはいつもわかりやすく説明してくれる。耳もとで囁くように。顔を寄せてときどきクスクス笑う。作品から急に振り返ってにっこり微笑みかける。ねえ、他人から見たら幸せな恋人同士にしか見えないよ。連れて行ってくれる不思議な美術館は新しい世界が広…

次の待ち合わせ

次の待ち合わせは音楽ホールのBARの横。あいかわらず不思議な待ち合わせ場所だけど、あなたらしくてわたしはうれしい。 わたしの行きたい美術館へはどう来るの?とあなた。また不思議な待ち合わせ場所を指定してくるのかな。 行ってみたいレストランは月曜休…

逢いたい

2時間でいいなら明日会えるよ。うれしい。でも「逢いたい」とあなたの声で聴きたい。 ふたり会える 時間をさりげなく 提案する それはあなたも逢いたいのかな?「あのね」「なに?」「会えるの、うれしい」不思議な答えいつも「ありがと」 月に数回の長電話…

占い

誕生日を知りたいのは 特別なことをしたいんじゃないの。相性占いをしたいからよ。あなたはなかなか教えてくれないけど。会える日は 0時になったら 占ってみる 今日いいこと 起こりますよう占いが 要注意と 教えてる そんな日は電話 ガマンしてみる占いに …

恥ずかしかったんだよ

お茶会の 途中で急に 私が髪を まとめてあげたら 慌ててうつむいたどうしてバナナクリップと言うのかを 感心している横顔が愛しいクリップを 止めるのはこっちでと 誰からも見えないところで意外にしなやかで手触りのいい髪に なんだかドキドキしてしまう何…

「いや、いいんだ。」と長電話

風邪ひきを 心配させて くれないの? 切ろうとすると 「いや、いいんだ。」っていつもより すこしハスキーな きみの声 くすぐったくて も少し聴きたい他愛ない 話ばかりで 笑いあう こんな普通の 幸せな時間わたしの不調に気付くのは いつもあなた 家族はけ…

真夜中の温かさ

風邪ひいてるからすぐに切るって言ったのに「いや、いいんだ」って、そのたび。何度も同じことばやり取りしながら結局長ばなしになっちゃったね。他愛のないことばかり、お互いにくすくす笑いながら。あなたの声は少しハスキーででもわたしの方だけ向いて。…

待ち合わせ

遅刻には慣れているけれど 映画の始まる時間気になる15分 そう言ったのに もう25分 まさか事故じゃないかと怖くてまたいっぱい 汗をかいて 来るのかな 無理なことだけはしないでね地球儀売り場で待っててなんて あなたらしくて嬉しいうっかりと遅刻しそうな…

風邪声

「おはよう」の一声でわかった。 風邪を引いてるね。 それなのに仕事もあるのに わたしが興味を持っていることに すぐに反応して情報をくれる。 優しすぎて心配になる。 街を歩く時だって 周りの人に気遣いながら歩く。 時には譲って 自分を後回しにする。 …

おはよう

朝、あなたの電話で起こされた。 非通知は誰からか解るから 「おはよう」は甘えてふにゃふにゃだったかも。 わたしが注目してる人がラジオに出るよと それだけの情報なのだけど とにかく思い出してくれてありがとう。

どちらのグラスだったか

ふた月前は あなたの唇が触れたカップを 抱きしめて眠ったのだった。 でも今日わたしたちは さっき使っていた冷茶のグラス どちらがどのグラスだったのか まるで気にしないで楽しくお茶会の続きをする。 もうそんなことは わたしも、たぶんあなたも どうでも…

最後の100m

ずっと2人でいたのに あなたの袖を掴んでいたのに 冷たいわけじゃなく優しいのに 手を取ってくれなかったね。 どうしてかは判らない。 2人で約束した日と みんなで会った後と 区別したっかっただけかもしれないし この前の2人が あまりに近すぎて それを…

腕の中で

エスカレーターで降りる9階分 あなたは腕を広げて 何かから守るように 何かを遮るように。 でもけして抱き寄せるのではなく ただそっとその腕の中にわたしを置いた。 もう友達ではない距離で わたしたちは互いに喧噪から逃れるように 寄り添いながら世間話…

手をつないで

あなたは会うなり私の手を取って引き寄せたので 私は驚くひまもなく もうあなたの腕の中にいた。 歩きながらあなたはわたしの ひとさし指となか指の爪をなんどもなんども あたたかい親指でなぞるので 私は驚いて無口になり 愛について考えていた。 ふと手を…

音楽

もういちど音楽に生きる歓びは あなたが笑顔で教えてくれた 今この瞬間に私が聴いているのは「第6番 悲愴」。なぜだと思う? 練習に行くための諸事かたつけて 向かうペダルの軽き幸せ この時だけは誰にも渡さない弦が鳴り響き合うその儚い時間

逢いたい

辛いことがあったらすぐに逢いたい いちばん寄り添ってくれるのはあなた 楽しいことがあってもすぐに逢いたい 誰より先に報告したい どうしようもないことが起きたときあなたは私の避難場所なのです あなたに会えるのはほんの数時間後なのに、今、この瞬間に…

電話

声が聴きたい ただそれだけで 電話をしていいのかとやはり迷う 次はこの日ならつながるよ。それはあなたも楽しみなのか優しさなのかとてもうれしいけどとても不安。

万年筆

春の大掃除をしたら 十五の時から使っていた万年筆が 思い出のように見つかって ただ、それだけのことなのだけれど その万年筆で あなたに手紙を書きたい。 連ねる言葉の数は わずかでいい。 うれしいことがあったと たぶん二行くらいの。

君としあらねば

君としあらねば なにをかやせん どれだけの桜が咲こうとも。 どれだけの言葉を連ねても。 どんな光が降り注がれても。

恋ならいくつもした。 いつも嘘をつかずに居たつもり それは傷つけ合うことでもあり 最後にはつかれて終わるのだ。 でもこんなふうに最初から 静かに光る五月のように おだやかに恋したことがあるだろうか。 たとえばあなたがどこかで 別の人を愛していたと…

はじめてあなたが夢に来た。 でもあなたとわたしの間には とても強い壁があって 手が届かなかった。 夢から覚めたとき わたしは涙にぬれていた。 夢なのに。ただ夢なのに。 ほんとうの世界のようで かなしくて、哀しくて、悲しくて。 初めて夢に来てくれたの…

バックアップ

自分が書いたものと向きあうと ほとんど吐き気に近くなる。 今なら消化できている。 なにもかも許せている。 でもあの頃には どれひとつとっても難しくて 自分で自分を傷つけた。 愛という字を連ねつつ 愛から遠いところにいたわたし。 けれども記憶を塗り替…

次の約束のために

きっぱりとした青 すべてを包む白 ほんのりとさくら色 いっそ主張する黒 きっと驚く赤いバラ。 次に会うときに どの色を着ようかと 悩んでいるなんて べつに知らなくてもいいんだけど。

小さな台所

小さな台所があるといい。 あなたのためにミルクティーを淹れ あなたのためにカレーを煮込み 生きる力を持つ野菜を刻み そんなことのためだけの 小さな台所があるといい。

雪が河になる日まで

ある日突然それは起こったのでなく そばに居ることを知ったその日から ゆっくりと静かに進んでいたのだ。 雪が溶けて土に戻りもういちど 湧いて清水となって光るように。 あまりにゆるやかな流れだったので 気づくまでに時間がかかったけど 降った雨が木に宿…

誕生日の贈り物

わたしはわたしの 誕生日の贈り物を決めた。 何が欲しいわけではないのです。 ただわたしのたからものを 理解してくれるひとと それをわかち合いたいだけなのです。 だからわたしの誕生日には そのたからものを贈るのです。 もう用意してあるので その日がく…

いつか一緒に 桜を観ることができるだろうか。 誰もいない 小さな公園の桜をあきることなく 時間にも空間にも縛られることなく。 ただ桜が咲いている。 ただその下に座っている。 そんなふうに あなたと。

許可なしに

小さな小さな石をお守りに決めた。 どこにでもある、たくさんの中のひとつ。 けれどお守りを決めてから よいことばかり起きるのはなぜだろう。 指に光る小さな誕生石は ほんとうはあなたとのお守り。 楽しいことがたくさんありますよう うれしい事件がおこり…

さくら色

さくら色に わが身はふかくなりぬらむ 心にしめて花を惜しめば よみ人しらず あなたの色に そまっているわたしを あなたは見つけて くれるでしょうか こんなにもふかく